先日、久しぶりに夫のテニスの試合の応援に行った。
私はテニスをやったことがないので、ルールや選手などには全く精通していない。
おまけに驚いた時などは大きな声が出るくせに、自分から大声を出すことがあまり得意ではないので、応援も積極的にできない。せいぜい誰かの応援に便乗して申し訳程度の声を出したり拍手をしたりするくらいだ。
ルールも分からず、応援もできないとなると、試合に自分が行く意義があるのか疑わしくなる。
しかもテニスの試合は大抵外で行われるので、寒いか暑いかが関の山なのだ。何回か観に行ったことがあるのだが、一度ものすごい寒い日に行って風邪をひいた。
そういった諸々の要素もあり、自分から積極的に観にいくようなことはないのだが、今回は久々に夫の方から応援に来ないかとお誘いがあった。
せっかく誘われたし、試合会場も比較的近いし、気候もいいし、重い腰を上げて行くことにした。
会場に着くと、まだ試合に入るまで時間があるようだった。さすがに日なたは暑かったので、近くの公園の日陰にあるベンチで休むことにした。
今時の公園は禁止事項が多い印象だったが、そこの公園は球技などもできるようで、小さいながらに人気なようだ。
近くでは野球小僧たちがピッチングとバッティングの練習をしている。
一番小柄な子がピッチャーをやっていたのだが、これがまた力強いピッチングで驚いてしまった。実はすごい子なのでは?と思いながら眺めていると、しょうもない下ネタでキャッキャと笑っているのを見て妙に安心してしまった。
それにしても、小学生男児のしょうもない下ネタ好きは時代を超えるのだなぁ…とアラサーの私もしょうもないことをしみじみ考えた。
次に公園にやってきたのは、おじいちゃんおばあちゃんと一緒に来たサッカー少年だ。おじいちゃんの方は杖をついていて、公園に着くなりベンチに座った。
マラソンランナーのような風格を宿したおばあちゃんの方は孫に駆り出され、なかなか理不尽なルールに振り回されながらサッカーの練習をしていた。
しばらくするとおじいちゃんが立ち上がり、持っていた杖を使っておもむろに地面に何やら書き始めた。どうやらゴールのようだ。
いやはや、杖にそんな用途があったとは。
さらに奥のベンチでは1人で来ていた老婦人が腰掛けていた。その方も杖を持っていた。
するとこちらの老婦人はその杖を両手で持ち、前にやったり後ろにやったりしてストレッチをしていた。
杖ってこんなに汎用性の高い代物だったのね…新たな発見になった。
そうこうしている内に夫の試合が始まった。一応近くに行き、ジェスチャーで頑張れアピールをする。
テニスはサーブを打つまでに少し時間があるのだが、その時に小さなワンちゃんを連れた女性が散歩に来ていて、私のすぐそばを通った。
無類の動物好きの私は、そのワンちゃんに釘付けになってしまった。でもそろそろサーブを打ちそうだ。
さすがに自分の応援に来ている妻が、応援そっちのけでワンちゃんと戯れていたらどう思うだろうか。全く気にしない気もするが、寂しい気持ちがゼロではない気もする。
なんとか自分を抑え、試合の方に目をやると、まだサーブを打っていなかった。
もう通り過ぎちゃっているだろうけど、もう一度ワンちゃんを拝みたい…!その一心でワンちゃんの方を振り返った。
すると少し離れたところでお花に夢中になっているワンちゃんが見えた。なんて可愛いんだろう…。
なかなか目が離せずにいたが、パッと見たら、飼い主の女性が全てを悟ったなんとも生暖かい顔でこちらを見ていた。
私は照れ笑いをして、視線を試合に戻したのだった。
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夫は無事に試合に勝った。
試合中に素敵だなと思ったのは、見ず知らずのおじ様方が「ナイスショットー」「ナイッサー」と敵味方関係なくプレーを称えてくれることだ。
対戦相手とも試合後にコミュニケーションをとり、「次の相手、強いんで頑張ってくださいね」などと声をかけていただいていた。
夫自身もテニスが紳士的なスポーツであることを誇りに思っていて、常日頃から私に刷り込みをしてくる。
正直な話、大学生の頃は「テニス=テニサー=チャラい人が多い」というイメージがあったが、今ではそのイメージも全く変わってしまっている。
夫はいつでもどこでもYouTubeでテニスの動画ばかり見ているが、この日の夜は一緒にロジャー・フェデラーとラファエル・ナダルの試合を観た。試合のことはよく分からないけども、2人の謙虚で紳士的な言動にいたく感動した。
こうやって少しずつ自分もテニスに詳しくなっていくんだろうと予感している。
まぁ、ポジティブな気持ちで触れられるものは多いに越したことはない。この状況を楽しんでいこうと思う。